配偶者の不倫を知ったとき、「不倫は犯罪なのか」「離婚理由になるのか」「慰謝料を請求できるのか」と疑問を持つ方は少なくありません。
日本では、不倫そのものを処罰する刑事罰は基本的にありません。
しかし、配偶者以外との性的関係が法律上の「不貞な行為」に当たると、裁判上の離婚原因や慰謝料請求の根拠になり得ます。
ただし、恋愛感情がある、二人で食事をした、LINEで親密な会話をしていた、といった事情だけで直ちに「不貞行為」と認定されるわけではありません。
さらに、不倫相手への慰謝料請求では、相手が既婚者だと知っていたか、夫婦関係がすでに破綻していなかったかなども重要です。
この記事でわかる内容
- 不倫と犯罪の違い
- 法律上の「不貞行為」の考え方
- 不倫が離婚理由になる条件
- 配偶者・不倫相手への慰謝料請求
- 慰謝料請求で確認される証拠
- 証拠集めで避けたい行為
- 慰謝料請求の時効
この記事では、2026年9月時点の民法と最高裁判例の考え方を踏まえ、不倫と法律の関係を初めて調べる方にもわかるように解説します。

個別の結論は事実関係によって変わるため、実際の請求や訴訟を検討している方は弁護士へ確認してください。
不倫は法律違反?犯罪になるのか
最初に押さえたいのは、「不倫」「浮気」「不貞行為」は同じ意味ではない点です。日常会話では似た意味で使われますが、裁判や慰謝料請求では、法律上どの行為が問題になるのかを分けて考えます。
不倫そのものを処罰する刑事罰は基本的にない
現在の日本には、既婚者が配偶者以外の相手と性的関係を持っただけで処罰される「姦通罪」はありません。そのため、合意した成人同士の不倫だけを理由として、警察に逮捕されたり刑事罰を科されたりする制度ではありません。
ただし、「犯罪ではない=法的責任がない」という意味ではありません。不倫によって配偶者の権利や法律上保護される利益を侵害したと評価されれば、民事上の損害賠償責任が問題になります。
問題になる中心は民事上の責任
不倫をめぐる法的な争いでは、主に「離婚」と「慰謝料」が焦点になります。
- 不貞行為を理由に裁判上の離婚を求める
- 不貞行為をした配偶者へ慰謝料を求める
- 条件を満たすときは不倫相手へ慰謝料を求める
刑事罰の有無と、離婚・損害賠償の責任は別の話です。「犯罪ではないから何も請求できない」と考えないようにしてください。
「浮気」と「不倫」は法律上の用語ではない
「浮気」や「不倫」は一般的な表現であり、民法がその言葉を定義しているわけではありません。法律上の離婚原因として民法に書かれている表現は「不貞な行為」です。
そのため、配偶者が異性と二人で食事をした、頻繁に連絡を取った、好意を伝え合ったという事情があっても、それだけで民法770条の不貞行為に当たると断定はできません。
法律上の「不貞行為」とは何を指す?
不倫問題を法律面から見る際、最も重要な言葉が「不貞行為」です。最高裁判例では、配偶者が自らの意思に基づき、配偶者以外の相手と性的関係を持つ行為が不貞に当たるとの考え方が示されています。
基本となるのは配偶者以外との性的関係
典型例は、既婚者が配偶者以外の相手と性交渉を持つケースです。継続的な交際だけが対象になるわけではなく、回数だけで機械的に決まるものでもありません。
一度の性的関係でも、不貞行為として問題になる余地があります。一方、「何回なら慰謝料が発生する」といった一律の基準はありません。
LINE・食事・デートだけでは不貞行為と断定できない
たとえば、次の事情は浮気を疑う材料にはなります。
- 「好き」「会いたい」などのLINEやDM
- 二人だけで何度も食事へ行っている記録
- プレゼントや宿泊予約の履歴
- 頻繁な通話履歴
- 親密な写真
しかし、これらは性的関係を直接示さない限り、単独では不貞行為の立証として弱いケースがあります。前後の行動、宿泊施設への出入り、宿泊記録など複数の情報を組み合わせて評価される場面もあります。
キスや抱擁だけなら絶対に問題にならないとは限らない
キスや抱擁だけで、直ちに民法770条の不貞行為と同じ評価になるとは限りません。ただし、夫婦関係を壊す程度の親密な交際が続いているなど、具体的な事情によっては別の法的評価が問題になる余地があります。
「肉体関係を証明できないから何の請求もできない」とも、「キスを見たから不貞行為が確定した」とも断定せず、事実関係全体を見る必要があります。
不倫は離婚理由になるのか
夫婦間で離婚への合意ができれば、協議離婚として手続きを進められます。問題になりやすいのは、一方が離婚を望み、もう一方が拒否している場面です。
民法770条は「不貞な行為」を裁判上の離婚原因としている
2026年9月時点の民法770条では、裁判上の離婚原因の一つとして「配偶者に不貞な行為があったとき」が定められています。現行条文はe-Gov法令検索「民法」で確認できます。
つまり、夫や妻が不貞行為を行い、話し合いでは離婚がまとまらないとき、不貞行為は裁判で離婚を求める法的根拠になり得ます。
「不倫が疑わしい」だけで裁判上の離婚が決まるわけではない
裁判では、疑いだけではなく、主張を裏付ける資料が重要になります。配偶者本人が不貞を認めていないなら、誰と、いつ、どのような関係があったのかを示す証拠が争点になり得ます。
「異性と会っていた」という事実だけではなく、性的関係を推認できる状況まで示せるかが重要です。
不貞をした側からの離婚請求は扱いが異なる
自ら婚姻関係を壊す原因を作った側は「有責配偶者」と呼ばれます。有責配偶者からの離婚請求は、相手方からの請求と同じようには扱われません。
ただし、別居期間、未成熟の子の有無、離婚によって相手方が置かれる状況などを踏まえ、有責配偶者からの請求が認められるケースもあります。「不倫した側からは絶対に離婚できない」と言い切るのも正確ではありません。
不倫した配偶者へ慰謝料を請求できる?
不貞行為によって精神的苦痛を受けたときは、配偶者への慰謝料請求が検討対象になります。慰謝料は罰金ではなく、精神的損害に対する民事上の損害賠償です。
慰謝料は不貞行為があれば自動的に決まるわけではない
慰謝料の有無や金額は、個別事情を踏まえて判断されます。たとえば、不貞関係の期間や態様、婚姻期間、不貞発覚前の夫婦関係、不貞による別居・離婚への影響などが検討材料になります。
法律に「不倫1回なら○万円」といった固定金額はありません。そのため、インターネット上の相場だけで請求額を決めるより、具体的な事情を弁護士へ伝えて見通しを確認する方が適切です。
離婚しなくても慰謝料請求が認められる余地はある
不貞が発覚しても、すべての夫婦が離婚するわけではありません。婚姻関係を継続しながら、不貞行為による精神的損害を理由として慰謝料を求める余地もあります。
ただし、離婚へ至ったケースと婚姻継続のケースでは、損害の評価が同じになるとは限りません。
不倫相手にも慰謝料を請求できるのか
不貞行為をした配偶者だけではなく、その相手方へ慰謝料を求められるケースもあります。ただし、「既婚者と交際した」という一点だけで必ず請求が認められるわけではありません。
相手が既婚者だと知っていたかが重要
不倫相手の責任では、既婚者だと知っていた、または注意すれば既婚者だと気づけた事情があったかが検討されます。
たとえば、相手から「独身だ」と繰り返し説明され、独身だと信じても無理がない状況だったなら、責任が否定される余地があります。反対に、結婚指輪、家族の話、SNSの投稿などから既婚者だと把握していた事情があれば、評価は変わります。
不貞関係が始まる前に婚姻関係が破綻していたケース
最高裁は、不貞関係が始まった時点ですでに夫婦の婚姻関係が破綻していたとき、特段の事情がなければ、不倫相手は他方配偶者に対して不法行為責任を負わないとの考え方を示しています。
ここでいう「破綻」は、単に「夫婦仲が悪かった」「会話が減っていた」と主張するだけで決まるものではありません。別居状況、夫婦間の交流、生活実態などを含めて判断されます。
不貞慰謝料と離婚慰謝料は分けて考える
最高裁判例では、不貞行為そのものによる精神的損害を対象とする請求と、離婚そのものによる精神的損害を対象とする請求は区別されています。
不倫相手へ「離婚させられた分まで慰謝料を払ってほしい」と求める場面では、単に不貞関係があっただけでは足りず、不倫相手が夫婦を離婚させる意図で婚姻関係へ不当に干渉したなど、特別な事情が必要とする最高裁の判断があります。
不倫相手への請求条件は、浮気相手に慰謝料請求できる?認められやすい条件・証拠・注意点でも詳しく解説しています。
不倫の慰謝料請求には時効がある
慰謝料を検討しているなら、証拠の内容だけではなく時間の経過にも注意が必要です。
不法行為による損害賠償は原則3年と20年の期間制限がある
民法724条では、不法行為による損害賠償請求権について、被害者が損害と加害者を知った時から3年間行使しないとき、または不法行為の時から20年間行使しないときは、時効によって消滅すると定めています。
不貞慰謝料を検討する場面でも、この期間制限が問題になります。
「3年を数える開始日」は請求内容によって確認が必要
不倫を知った日、相手を特定した日、離婚した日など、請求する損害の内容によって論点が異なるケースがあります。
「不倫発覚から3年経っていないから大丈夫」と自己判断せず、期間が気になる方は早めに弁護士へ相談してください。
慰謝料や離婚を考えるなら不倫の証拠が重要になる
配偶者が不貞を認めているなら話し合いで進められるケースもあります。一方、全面的に否定されたときは、証拠の有無が大きな争点になります。
証拠は「親密そう」より性的関係を推認できるかを見る
不貞行為の証拠として検討される資料には、次のようなものがあります。
- ラブホテルへ二人で出入りする写真や動画
- 宿泊を伴う外出の記録
- 性的関係を認めるメッセージ
- 本人が不貞を認めた録音や書面
- 日時や場所が連続して確認できる調査報告書
一つの資料だけで結論が決まるとは限りません。複数の資料がつながり、誰と、いつ、どこで、どの程度の関係だったのかを示せるかが重要です。
LINEやスマホ履歴は補助的な材料になるケースがある
LINEで「昨日は楽しかった」「また泊まりたい」といった会話があれば、有力な手掛かりになる可能性があります。ただし、曖昧な会話、通話履歴、位置情報だけでは、性的関係まで説明できないケースもあります。
スマホ上の記録をどう見るか、取得方法で注意すべき点は、スマホ履歴は浮気の証拠になる?LINE・位置情報・無断確認の注意点で詳しく確認できます。
証拠が足りるか分からない方へ
今の状況で調査が必要か、費用と対応範囲を先に確認できます
まだ依頼を決めていない段階でも、手元の情報からどの程度の調査が必要になりそうか、複数の探偵社へ匿名で確認できます。
※無料相談・見積もり後に依頼するかどうかは自分で判断できます。
証拠集めなら何をしてもよいわけではない
不倫を疑っている時は、「証拠が消える前に確認したい」と焦りが出ます。しかし、証拠の取得方法によっては、別の法的トラブルへ発展するおそれがあります。
他人のアカウントへ無断ログインしない
配偶者のIDやパスワードを使い、SNS、メール、クラウドサービスなどへ無断でログインする行為は避けてください。不正アクセス禁止法との関係が問題になる可能性があります。
画面が開いたままの端末を見る行為と、パスワードを入力して外部サービスへログインする行為では、法的な論点も異なります。「夫婦だから自由に見てよい」と決めつけない方が安全です。
GPSや紛失防止タグは設置方法に注意する
位置情報を取得する機器やアプリは、設置場所、対象物の所有・管理関係、取得方法、目的などによって法的評価が変わります。
相手の行動を知りたいという理由だけで、他人の所有物へ無断で機器を取り付けたり、位置情報を継続取得したりする行為は避けてください。
尾行や張り込みも行き過ぎればトラブルになる
自分で後を追う行為も、方法や頻度によっては相手とのトラブルを招きます。さらに、顔を知られている配偶者本人が尾行すると発覚し、以後の証拠確認が難しくなる可能性もあります。
慰謝料や離婚を視野に入れているなら、「自分で取れる証拠を増やす」より、「今ある情報を壊さず残し、次に何が必要か確認する」という考え方が安全です。
不倫が分かった後は目的を先に決める
同じ不倫発覚でも、望む結果によって必要な対応は変わります。感情が強くなっている時ほど、相手を問い詰める前に自分が何を求めているのかを確認してください。
離婚したいなら「離婚原因」と「条件」を確認する
離婚を希望するなら、不貞行為の証拠だけではなく、財産分与、子どもの監護、養育費、婚姻費用など別の論点も出てきます。
不貞の証拠を取っただけで離婚条件がすべて決まるわけではありません。
法的な交渉を始める前に、弁護士へ相談する範囲を確認しておくと進め方を判断しやすくなります。
慰謝料を求めたいなら請求相手と証拠を確認する
配偶者だけへ請求するのか、不倫相手にも請求するのかで必要な確認事項が変わります。
不倫相手へ請求するなら、相手の特定、既婚者だと認識していた事情、婚姻関係が破綻していなかった事情なども検討対象になります。
まだ離婚を決めていないなら事実確認を優先する
「不倫なら離婚する」と今すぐ決める必要はありません。事実を確認してから、関係修復、別居、離婚、慰謝料請求などを比較する考え方もあります。
特に証拠が弱い段階で問い詰めると、相手が警戒して連絡手段や行動パターンを変える可能性があります。
まだ疑いの段階なら、現在わかっている日時・外出・帰宅時間・発言などを記録し、無理な確認を増やさない方がよいでしょう。
弁護士と探偵は役割が違う
不倫問題では「弁護士と探偵のどちらへ相談すればよいのか」と迷う方もいます。両者の役割は同じではありません。
弁護士は法的な請求や交渉を扱う
慰謝料請求、離婚条件、示談書、調停、訴訟など、法的な手続きや相手方との代理交渉を依頼したいなら弁護士の領域です。
「今ある証拠で請求できるか」「誰へいくら請求するか」「時効が迫っていないか」といった判断も弁護士へ確認する内容です。
探偵は事実確認や行動調査を扱う
探偵は弁護士のように慰謝料請求を代理する立場ではありません。一方、対象者の行動を確認し、不貞を推認できる場面を写真・動画や調査報告書として記録する役割があります。
まだ不貞の事実自体が分からないなら、まず「何を確認したいのか」「どの日時が怪しいのか」を明確にしてから調査の要否を考えると、無駄な調査時間を減らせる可能性があります。
探偵へ依頼するか迷っている方へ
まず匿名で調査費用と対応範囲を比べられます
「証拠が必要なのか分からない」「料金だけ知りたい」という段階でも相談できます。複数社を比較してから、調査を依頼するか判断してください。
※相談・見積もりのみでも利用できます。契約を急ぐ必要はありません。
不倫と法律についてよくある質問
不倫の違法性、不貞行為、慰謝料、証拠について、特に疑問が出やすい内容へ回答します。Q. 不倫をしたら逮捕されますか?
成人同士が合意して行った不倫だけを理由として逮捕される制度ではありません。現在の日本には姦通罪がなく、不倫そのものに刑事罰はありません。一方、不貞行為は裁判上の離婚原因や民事上の慰謝料請求に関係します。
Q. キスをしただけでも不貞行為になりますか?
キスだけで直ちに民法770条の不貞行為と認定されるとは限りません。不貞行為では配偶者以外との性的関係が中心になります。ただし、交際態様や夫婦関係への影響によって別の法的評価が問題になる余地があります。
Q. 一度だけの肉体関係でも不貞行為になりますか?
一度だけでも不貞行為として評価される余地があります。回数だけで一律に決まる制度ではなく、行為の内容や証拠など具体的な事情を踏まえて判断されます。
Q. 不倫相手には必ず慰謝料を請求できますか?
必ずではありません。不倫相手が既婚者だと知っていたか、注意すれば既婚者だと把握できたか、不貞関係の開始時点で婚姻関係がすでに破綻していなかったかなどが重要です。
Q. LINEのスクリーンショットだけで慰謝料請求できますか?
LINEだけで十分とは限りません。性的関係を明確に認める内容なら重要な資料になり得ますが、親密な会話だけでは不貞行為を直接示さないケースがあります。宿泊施設への出入りなど他の資料と合わせて評価される場面もあります。
Q. 不倫の慰謝料は何年で時効になりますか?
不法行為による損害賠償請求権は、原則として損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年という期間制限があります。ただし、不貞慰謝料と離婚に伴う慰謝料では起算点に関する論点が異なるため、期間が迫っている方は弁護士へ早めに確認してください。
まとめ
不倫そのものには基本的に刑事罰がありません。
しかし、配偶者以外との性的関係が「不貞な行為」に当たれば、裁判上の離婚原因となり、配偶者や条件を満たす不倫相手への慰謝料請求につながる可能性があります。
一方、LINE、食事、キス、通話履歴などを見つけただけで、法的な不貞行為が確定するわけではありません。
不倫相手への慰謝料請求でも、既婚者だと知っていたか、不貞開始時に夫婦関係が破綻していなかったかなど、複数の事情が確認されます。
不倫を知った直後は、感情のまま問い詰めたり、無断ログインや位置情報の取得へ進んだりせず、今ある証拠を残してください。

そのうえで、法的請求を検討するなら弁護士、事実確認が必要なら調査の要否を探偵へ相談するなど、目的に合う専門家を選ぶと判断しやすくなります。
